GALAPAGOS Stationを使ってみたんだけど…
本体の発売日に公開が間に合わなかった、シャープの電子書籍端末「GALAPAGOSメディアタブレット」用のPC側サポートソフト「GALAPAGOS Station」ですが、サイトの告知通り、12月20日に提供が開始されました。
昼間はちょっと忙しかったので、深夜にダウンロードして試してみました。
といっても、多機能なツールではないので、一通り触ってみるのに時間はかからないですが。ともあれ、ダウンロードする。自己解凍ファイルなので、起動して解凍*1。解凍された*2インストーラーを実行すると、GALAPAGOS Stationと、XMDFを作成するための仮想プリンタードライバー(GALAPAGOS XMDF Clipper)がインストールされます。
起動する*3と、「ストア」のアカウント情報の設定を促されますので、メディアタブレットでストアにアクセスする際のユーザーIDとパスワードを登録します(パスワードは保存することも、都度入力することも可能)。これで、USBケーブルでPCとタブレットを繋ぐと、GALAPAGOS Stationとの同期を促されますので、とりあえず同期。最初の同期までにどれだけストアから書籍等を入れているかにもよると思いますが、このときは2〜3分で完了。
先に書いたとおり、多機能なツールではなく、メディアタブレット上のコンテンツを管理する事と、パソコンからのストアの利用(現在、書籍のみ対応)が、主な機能ですので、操作自体も単純です。コンテンツの管理も、同期した物が「ブックシェルフ」タブ画面にリストアップされるので、既読状態にするなど、指定するだけです。
このほか、一番の目玉機能は、PDFやテキストファイル(シフトJISテキストのみ対応)をメディアタブレットに登録する機能でしょう。「ブックシェルフ」タブ画面のライブラリ→マイクリップに、ファイルを登録するだけです(アプリケーションウインドウに直接ドラッグ&ドロップで登録可能。ブックシェルフ画面にしなくても大丈夫)。このほか、印刷操作経由(XMDF Clipper)で、様々なアプリケーションから、XMDFファイルを作成した場合、自動的にマイクリップに登録されます。あとは同期すれば、メディアタブレットのブックシェルフのマイクリップタブに表示されます。使い方は、すごく簡単でした。
問題は、メディアタブレット側のPDFやXMDFビュアー機能です。テキストビュアーは、データが軽い分レスポンスが良く、まだいいのですが、PDFは物によってはレスポンスが悪くて使い勝手が非常に悪いものになってます。試したPDFは、メディアタブレットのカタログPDF(画像主体)と、XMDF Clipperの操作マニュアルPDF(テキスト主体)。テキスト主体の操作マニュアルPDFの方はまだいいのですが、カタログPDFの方は、何か操作しても一拍おく感じです。しかも、これはテキストビュアーも同じですが、ページめくりに際してフィードバックが無い。フリックした際のページめくりやスクロールなどの反応が全くなく、フリック後にページ切り替えが行われる仕様のようです。テキストビュアーなら、フリックからページ切り替えの時間が短いので、まだ我慢できますが、画像主体のPDFだと、自分の操作が正しいのか、自分が今行った操作は受け付けられているのか、反応が悪いので心配になります。ストアコンテンツのビュアーでは、できの良いページめくりエフェクトがあるのに、どうしてこちらには搭載しなかったのか、残念です。同様に、拡大/縮小の操作にピンチジェスチャーが使えません。拡大/縮小*4はダブルタップだけです*5。おそらく、レスポンスが悪いために、ピンチジェスチャーに合わせて倍率を変化させるのが難しいということで、倍率変更はダブルタップだけという事にしたんだと思いますが、不統一感が残念です。
一方、XMDFの方ですが、こちらはさらに中途半端。こちらは、画像主体でもテキスト主体でもレスポンスが良く、軽快に操作できます。ページめくりエフェクトもスクロールで搭載されているのですが、どういうわけか、ページ送り(次ページ)方向でしか反応しません(前ページ方向では、フリック後にエフェクト無しで切り替え)。また、フリックを画面5分の1程度行った時点でスクロールが始まり、強制的に次のページまでめくってしまいます(前ページへの戻し方向でも、同じ程度のフリックでエフェクト無しに切り替わります)。途中で停止したり、ページ送りをやめる様な操作が行えません。強制的にスクロールするのはともかく、片方向だけに実装されているのは、理解できません。ただ、レスポンス自体は軽快なので、気持ちは悪いですが、慣れてしまえばいいことかもしれません。
XMDFの方の一番の問題は、XMDF ClipperでXMDFを作成するとき、閲覧する端末*6専用の解像度でデータを作ってしまうこと。10.8型向けとして作成すると、5.5型では閲覧できません*7(5.5型しか持っていないので、逆パターンは試していません)。なぜ他モデルのデータを作ろうとしたかというと、XMDF Clipperで作成したXMDFは、上に書いたとおり「(おそらく)専用の解像度でデータを作ってしまう」からです。どういう意味かというと、拡大/縮小ができないんです。だから、大型ディスプレイ用のデータなら、サイズに余裕がある分、拡大/縮小や、通常倍率でも自由にスクロールとかできるかなと試してみたわけですが、閲覧できませんでした。また、プリンタードライバーで印刷という形で作成するので、ページサイズを変えたらいいかもと試してみましたが、結局は1ページがきっちり画面いっぱいに表示されてしまい、同じ結果となるだけでした。この仕様では、10.8型ならともかく、5.5型ではA4サイズのドキュメントなど一般的な文字サイズでは判別不能です。初めから5.5型で読みやすいようなレイアウトでドキュメントを作成すればいいのでしょうが、既存のドキュメントを手軽に持ち出したいという用途では、それは無理です。
この、拡大/縮小に対応していないという点は、慣れがどうこう、軽快だからどうこうで済む問題ではないでしょう。というか、たぶん画面解像度きっちりのデータで作っているから、軽快に操作できるんでしょうね。
ほかにも残念な点があります。画面回転に対応していないこと。画面のドット数が縦横で異なるから、拡大/縮小に対応していない現状のデータで、回転して表示できないことまでは理解できますが、端末を横にして自動回転が働いた際、コンテンツ表示が暗転して、回転に対応していない旨のダイアログがでるという対応の仕方はいただけません。
XMDFの問題が、Clipperの問題なのか、ビュアー側の問題なのかはわかりませんが、正直なところ、どうしてこんな仕様で提供したのか理解に苦しみます。「次世代XMDFビューア」というページで、「指でなぞって、ページをめくることができる」「レイアウトそのまま、本文だけ拡大できる」とか高らかにうたっているページに、「XMDFコンテンツ以外のデータも閲覧できる」と銘打って、テキストやPDF、それ以外はXMDFに変換して持ち出すことが可能と書いてあったら、多少の期待はしたくなるものでしょう。少なくとも現状では、5.5型モデル(モバイルモデル)は、PDFおよびXMDFでの自作ドキュメント持ち出しには向かないと言う結論になってしまいます。PDFに関しては、軽いデータならそこそこ使えますが。各データの登録が簡単な操作で行えるだけに、この状況は非常に残念です。
なお、テキストに関しては、ユーザーインターフェース(ページめくり部分)が残念ですが、結構使えます。青空文庫形式のテキストではルビに対応している様です。
最後に、今日まで使ってきた上での、GALAPAGOS(メディアタブレット)に関する雑感を。
うーん、やはり、ソフトウエア(ファームやストアなども含む)で損をしているガジェットだというのが結論。もう少し作り込むことはできなかったのかな、シャープさん。
本体(メディアタブレット)だけ(充電と無線LANが必要ではあるけど)で定期購読コンテンツが自動配信されるというのは、とても魅力的だけど、現状では、それくらいしかメリットがない。その目玉である新聞の選択肢が少ないのは気になるけど(あと、縦書きレイアウトに対応していないのも、個人的には非常に残念。他メディア、特にインターネットとの差別化ができていない。まあ、慣れではあるけど)。
ストアコンテンツについては、ビュアーに入ってしまえば、あまり文句は無い*8使い勝手なので、ストアコンテンツが主目的の人は、買っても後悔しないで済むかもしれない。
でも、それも読みたいコンテンツが存在してのこと。コンテンツの拡充をもっと頑張らないと、数万円もする専用端末が生き残れる道理はないわけで、キラーコンテンツが幾つか存在しないと、iPhoneやiPad、スマートフォン等の電子書籍も読める汎用端末を既に使っている人は乗り換えてくれません。
特にGALAPAGOSはカラー液晶を選んだ点で、マルチメディア系に強い端末にはなっていますが、それは電子ペーパーを使った電子書籍専用端末に比べての特徴であって、iPadやAndroidタブレットなどの汎用端末との差別化はどこにも見あたりません*9。自分が今持っている端末でできる事(読めるコンテンツ)を、わざわざ電子書籍専用の端末を買ってする(コンテンツも再購入する)なんて人、そうそういませんから。
汎用端末なら、コンテンツがある程度拡充するまで、別の用途で使うことができるけど、専用端末ではそうはいかない。まだその手のガジェットを持っていなくても、いざ買う機会が訪れた際には、同じコンテンツがある様なら色々できた方が無難として、(価格帯も同じ様なものだし)汎用端末を選んでしまうでしょう。
リアル書籍や他の端末(マーケット)よりもかなりコンテンツが安価であるとか、話題作をコンスタントに発売し、それを独占あるいは先行提供するとか、発売日から一定の期間ごとに価格が下がっていくとかのような、利用していて得する様な特長がなければ、(GALAPAGOSに限らず)電子書籍専用端末の普及なんて夢のまた夢です。逆に言えば、利用者が明らかなメリットを享受できるようなマーケットが安定的に提供できるなら*10、多少ハードやソフトが劣っていても、一定規模の市場が築けるはずということ。現在の「ストア」(TSUTAYA GALAPAGOS)がどうかというと、価格については、一部を除いてそれほどインパクトがあるものではないし*11、品揃えもまだまだ。キラーコンテンツがあるかというと、自動配信(定期購読)の新聞が3紙しかない。雑誌も幾つかあるけれど、やはりまだ選択肢が少ない*12。書籍も、2万とか3万とかではまだ足りない。
私自身は、部屋が本で埋まっている*13状態なので、電子書籍が普及することを望んでいるのですが、ストアを覗いてみても、買いたい本が見当たらない。もちろん、私の好みが人とずれているだけですが、現状では買いたいと思える電子書籍があまり見当たらないという状態です。また、一番の心配は、将来、端末やフォーマット、あるいはマーケットが使えなくなった場合(市場撤退、次世代技術の台頭による現行技術の陳腐化等々)、それまでに購入したコンテンツはどうなるのか、その辺りの保障が全く無いこと。何らかの保障が明確化されていれば、安心して購入できるんですけどね*14。
- ここでストレス。市井のフリーソフトだって、デフォルトでデスクトップとか、圧縮ファイルのあるフォルダーがデフォルトで設定されているものなのに、わざわざユーザーが指定してやらないと解凍できないって言うのは、大手の電子機器メーカーが提供するソフトとしてどうなの? [↩]
- またもストレス。指定したフォルダーに剥き出しでインストーラーアプリケーションとReadmeファイルを作成された。ファイルが複数の場合は、フォルダー作ってよ。いくつものファイルが既に存在するドキュメントフォルダーに解凍とかした場合、見つけられないかもしれないよ。インストーラーの方は、GPStation〜という名称で、そもそも絶対に存在するとわかっているファイルだからまだ見つけやすいけど、Readmeの方は「最初にお読みください.txt」という、剥き出しで添付するには最低の名前 [↩]
- 実は、ここで最大のストレス。起動はするものの、表示が変。ただし、これはこちらの環境のせいの可能性が高い。環境というのは、仮想環境のWindows XP。仮想環境はVirtualBoxの最新版を使用。試しにXPのVAIOにインストールしてみた場合には、この問題は発生しなかったので。でも、他のソフトは一切問題なく動いているんだよなぁ 。状況としては、以下の通り。デフォルトのトップ画面の「デスク」タブは、タブの中身がいくつかのブロックに分かれているのだが、そのブロックがそれぞれ個別の最前面ウインドウになっている感じで表示が浮く。他のタブに切り替えてもその「最前面ウインドウ」が残り、被さって表示されたり、一旦、アプリケーションのウインドウを画面外に出して元に戻すと、その部分が真っ黒になったりノイズがのったり。最悪なのは、メニューやダイアログなどが、「最前面ウインドウ」化したブロックの下に表示されるので、使うのに支障がでる状態になること。「デスク」タブに切り替えなければ症状は発生しないので、設定で、起動時の画面を「前回終了時の画面」にして、「デスク」タブは使わないようにすることで、とりあえずしのぐことに [↩]
- 通常→拡大→さらに拡大→通常という方向にしか倍率が変化しないので、実際には縮小してないけど [↩]
- ピンチしようとすると、「その操作は無効。拡大縮小はダブルタップでしてね。」という感じのメッセージが出る [↩]
- 現状、メディアタブレットの10.8型(ホームモデル)と5.5型(モバイルモデル) [↩]
- 同期はできる。メディアタブレット上で開こうとしたときに初めて文句を言われる [↩]
- 細かい点では色々ある [↩]
- 実際、メディアタブレット自体はAndroid端末にオリジナルの環境をかぶせただけだし [↩]
- そしてそのメリットを一般の人にわかりやすく、なおかつ大々的に告知できるなら [↩]
- 古い作品なんかは、逆にリアル本の方が安いくらいだ。まあ、古い作品の電子化(スキャンで済ますのではなく、テキストデータも作成する)は面倒な割に売れる見込みも少ないからという理由かもしれないが [↩]
- あと、日経系は高い [↩]
- 廊下まで埋まっている [↩]
- まあ、ビデオメディアも同じだけど。XMDFはソニーのReaderも対応しているから、そういう意味では代替ビュアーは入手できると考えていいのかな? [↩]
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